colnyago’s diary

勝手気ままに書き散らかしたものです

大学院受験についての諸々

毎年、この時期になると、各大学で大学院受験が始まる。およそ、8月下旬頃までが最盛期かと思う。

私の研究室の4年生も、大学院希望者が何人かいる。そのうちの一人はすでにそのまま修士に上がることが決定しているが、他の学生はこれから学外受験だ。一人は、先週受けてきた(結果はまだ不明)。もちろん、4〜6月ごろまでに、希望する大学の各研究室への事前訪問は済ませている。

毎年の恒例ながら、他大学研究室を受験する4年生へのアドバイスとしては、以下に挙げることができる(理系大学院受験が対象)。

1)教授あるいはPIの研究内容や研究室について十分に調べてから訪問すること

最近は、各研究室独自のHPを開設していることが多いので、それを見て事前知識を得ていることは当然。しかし、それだけでは情報が足りないのは確実なので、自分がやりたいことや興味あること、将来の目的にある程度マッチしているかどうか確かめるために、その研究室の主催者には、あらかじめ質問を考えておき、自分が欲しい情報を得るようにしておく。また、事前に面会しておかないと、いくら試験の点数が良くても取ってもらえないかもしれない。

2)その研究室に在籍している大学院生(修士、博士)や学部生にも話してみる

研究室主催者(教授、PI)は、基本的にいいことしか言わない。なので、ラボの実情を知るためには、その研究室の学生に聞くのが一番良い。ここで、ブラックな話が出てくるようなら、その研究室の受験はもう一度よく考えたほうがいいということになる。例えば、拘束時間について、教授は9〜18時と言っているが、そこの学生曰く、日付が変わるのが当たり前。はたまた、就職活動していいはずなのに、就活で休んだぶんは休日出勤でやらないといけない。教授が気に入らないことを学生がやったとすると、その学生が無視されるようになる、など。一事が万事ということは本当にあるので気をつけたほうがいい。どうしても行きたいなら、止めませんが。

教授としては、研究を進めて欲しいので、そういうことを言いたい気持ちがあるのはよく理解できる。しかし、最初に学生に言ったことに対して、全く責任を放棄し(つまり嘘を言って)、学生を従わせるのはよくない。また、学生はよく失敗やミスを、研究や私生活でする。それに対して、きちんとアドバイスするのは必要だし言われた学生も納得して受け入れてくれるが、その学生の人間性まで否定することは、倫理的によくないし、別問題だ。いわゆる、アカハラパワハラにあたる。こういうのは、思った以上に大学ではよくある。各研究室の学生も、そのことには気づいているが、あえて言わないこともあるので、よく話を聞いて、ちょっとした感情の起伏も逃さないようにすること。行間を読む力が必要になる。雰囲気を察知しよう。

その他としては、研究の進め方として、個人型かチーム型かどうかも聞いておいたほうがいい。学生の資質によるのだが、個人型の方が能力を発揮できるタイプとチーム型の方がいいタイプがいる。自分がどちらのタイプかわかって入ればいいのだが、4年生ではまだわからないので、難しいところ。私は、最初は個人研究型の方が良いと思っている。その理由は、個人型の方が、今何のために何をやっているのかが非常に明確なためである。もちろん、チーム型でもそれは明確にしないといけないが、個人型より劣る。チームも2〜3名であればいいが、数名以上でのプリジェクト型になると、完全に歯車の一つとなる。研究を始めてすぐの頃は、個人型で頭と技術を徹底的に鍛えるべきだと思う。それからチーム型に入っても問題ない。逆(チーム>個人)の移行はしんどい。

3)その研究室の研究活動について

HP以外だと、その研究室の教授の氏名がわかれば、PubMedGoogle Scholarで論文などの出版状況がわかる。大体、小さな研究室で、平均すると1年1本くらいのペースで論文が出ていれば、健全に研究ができていると考えていいだろう。もちろん、大きな研究室では出版される論文の数はもっと多くなる(共同研究も多いため)。さらに、その論文の第一著者がその研究室の修士や博士の学生であれば、尚のこといいと言える。これは、その研究室では、健全に学生が研究を実施し、論文執筆まで指導されていることを意味する。すなわち、教育体制がきちんとされていることが外側からわかる。本当に行われているのかどうかというと、こればっかりはわからないので、やはりその研究室の学生に聞くしかない。

あと外部資金のうち、科研費の採択状況ついては、科研費データベースから調べることができる。これまでに採択された科研費の一覧をみることができる。ある程度、科研費の採択と研究活動は相関するので、研究室選びの重要な情報となる。

4)大学院受験の過去問

研究室訪問もし、大体考えていた通りで受験しようと思ったならば、できるだけ大学院受験の過去問を入手することをお勧めする。入手先は、その研究室の学生、学科の事務室など様々なので、まずは学生に聞いた方がいい。

特に、他大学の大学院を受ける場合は、過去問は必須である。学部の受験と異なり、大学院受験は、かなり専門性が高くなる。これは、基本的に、その大学院の教授たちの研究内容を反映した問題となるためだ。言葉は悪いが、かなり癖が強い。もちろん、非常に基本的な問題も含まれるので、細胞生物学、分子生物学、生化学関係の教科書は一通り見ておかないといけない。

過去問を手に入れたら、その大学HPから各教授の研究内容と照らし合わせて見て、問題の出題傾向を見てみる。そうすると、大体、各教授があるテーマから出題することがわかってくる。そうなってくると、あとは過去問は必ず解けるようにしておき、出題テーマ関連を少し広げて背景となる学問領域や専門用語などを勉強しておけば、本番で6〜7割以上は解答できるようになる(十分合格圏に達している)。分野にもよるが、大体、2〜3ヶ月くらいの勉強は必要だろう。

外国語はほとんどの場合、英語となる。最近はTOEICで代替されるが、およそ600点以上だろうか。私の研究室から他大学に合格した学生の点数は、皆おおよそ600以上だった。TOEICなどではなく、昔ながらの独自の試験を課すところもある。学部レベルのところもあれば、かなりレベルの高いところもある。これもきちんと各大学の問題レベルを把握し、準備しておく。語学に即効性はないので、毎日論文を読み、文章作成はしておくべきだろう。どうせ大学院に上がれば必要になるし、博士後期まで行く人は、英文論文の執筆が待っているので、やって損はない。私的には、TOEICはビジネス英語なので、あんまり意味ないと思う。その学生の実力を知るには、徹底的に読ませる書かせるが一番で、実は英語ではなく国語力を測っているにすぎないのである。母国語を超えることはない。

次は、面接。大体、筆記の点数で順位付けが行われ、最後の人物評価のために面接が課される。しかし、中には面接の点数が高く、最後に大逆転もあるので一概にいえない。よく調べておこう。

まず、服装はきちんとして、スーツで行くべきである。私が大学院受験した時の面接は、私服だった(8月にあったので、Tシャツ、ジーパン)。受験者のほとんどがそうだった時代で、今では考えられない。最近は皆スーツだ。私服はほとんどいない。TPOも見る時代になってしまっている。そして、言葉遣いも気をつけるべきだ。その辺もちゃんと見られている。馬鹿丁寧になる必要はないが(慇懃無礼)、失礼にならないようにする。就職面接と同じ要領。あと、大体の想定質問には答えられるように準備しておく。例えば、志望理由、合格したらやってみたい研究テーマ、現在行っている研究の説明(1分と言われれば1分で、3分でと言われれば3分でできるように。また、図表はないので、それでも相手にわかるようにしておく)、志望している研究室の研究内容、博士過程に上がるかどうか、アルバイトは今後も続けるかどうか、など。私が以前聞かれたところで変わっていたのは、「今まで、この人とはうまくやれないなと思った時の対処法は?」というのがあった。当時は、まだ若くて自分の経験も足りず、変なこと聞くな、と思っていたが、社会に出ればこんなことだらけだということが今ではよくわかる。同じ組織内にいると非常によく出会う問題だ。ビジネスライクな答え方でも問題ないだろう。

これらの事柄に気をつけて、学生たちには、ぜひ第一希望の研究室に合格して、自分の将来が少しでも良くなるようになってもらいたい。